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大阪地方裁判所 昭和44年(行ク)20号 決定 1969年10月21日

申立人

朴義

代理人

松本健男

樺嶋正法

被申立人

大阪府公安委員会

代理人

道工隆三

ほか四名

主文

本件申立てを却下する。

申立費用は申立人の負担とする。

理由

第一当事者双方の申立て

一、申立人

被申立人が申立人に対してなした、左記記載の風俗営業許可申請に対する昭和四四年四月一〇日付不許可処分の効力は、当裁判所昭和四四年(行ウ)第八二号風俗営業不許可処分取消請求事件の本案判決が確定するまで、これを停止する。

(一)  申請年月日 昭和四三年一一月一八日

(二)  申請内容 大阪府北河内郡交野町大字私部一四二六番地の三一にぱちんこ遊技場「交野会館」を設置して営業すること。

との裁判。

二、被申立人

主文と同旨の裁判。

第二申立人の申立理由

一、(一) 申立人は、昭和四三年八月頃、夫金武夫名義で大阪府北河内郡交野町大字私部一四二六番地の三一、宅地286.51平方メートルを購入し、ぱちんこ遊技場とするため(当初は中華料理店にする予定であつた。)、引き続き同地上に申立人名義で、建築面積152.109平方メートル、延面積199.275平方メートル、用途をぱちんこ遊技場とする、木造トタン葺二階建店舗の建築に着手し、同年一〇月三〇日に大阪府建築主事の確認を受け、同年一一月中旬には右建築工事を完成した。

(二) そこで、申立人は、昭和四三年一一月一八日、被申立人に対し右店舗においてぱちんこ遊技場「交野会館」を営業するについて、風俗営業等取締法二条一項、風俗営業等取締法施行条例(昭和三四年三月三〇日大阪府条例第六号、以下単に施行条例という。)に基づき、営業許可の申請をしたところ、昭和四四年四月一〇日被申立人より右申請を却下する旨処分を受けたので、更に、同年五月二二日右不許可処分に対し行政不服審査法六条により被申立人に対し異議申立てをしたところ、同年七月九日付をもつてこれを棄却する旨の決定がなされた。

(三) 被申立人によつてなされた不許可処分の理由は、本件営業所の位置が住宅地域内であり、かつ善良の風俗保持上著しく支障があると認められ、施行条例二条の規定に牴触するというのである。

二、本件申立ての適法性

本件不許可処分の効力の停止を求める本件申立ては適法である。

営業の自由は憲法上保障されているのであつて、公共の福祉に基づく格別の合理的理由がない限り、これをあらかじめ包括的かつ全面的に禁止することは、原則的に許されない。この意味で風俗営業等取締法二条の許可は、実際においては、恰も公安条例や道路交通法による集団行進の許可と同じく実質的な届出制として運用すべきものである。即ち営業自体は原則として自由であるが、ただ公共の福祉上行政庁への届出を義務づけており、右の届出に対してこれを受理しない処分(不許可処分)がなされた場合において右営業を実施することが禁止されるにすぎないのであり、したがつて営業の自由は不許可処分を解除条件として存続するものと解すべきである。そして施行条例に定められている許可基準に該当する場合においては必然的に許可がなされるべきものであり、許可処分は単に許可条件が存在することの確認行為にすぎず、これによつて当該営業の自由が創設されるものでは決してない。それ故行政庁がなす不許可処分は本来の営業の自由を制約する効果を伴う創設的、形式的処分というべきであり、右不許可処分の効力の停止は、その不許可処分によつて生じた営業の禁止措置を限時的に解除する処分に外ならない。したがつて、申立人は本件不許可処分の効力が停止されることによつてぱちんこ屋営業を実施する仮の地位を回復するのであるから、本件申立てが適法であることは当然である。

第三本件不許可処分の違法性

本件不許可処分は施行条例一一条の解釈適用を誤つてなされたものであり、このため憲法二二条および二九条が保障する営業の自由と権利を侵害するものであつて違法であり、取り消されなければならない。

(一)  本件ぱちんこ遊技場が設置されることによつて善良の風俗を保持する上で著しい支障が生ずるということはできない。

(1)  本件遊技場設置場所は、京阪電鉄交野駅の商業区域に隣接する地域に存するのであるが、同商業区域は現在すでに商店街などとして急速に発展しており、また極めて近い将来更に飛躍的に発展しようとしているのであつて、本件設置場所は純然たる住宅地域内にあるとはいえないものである。このような事情を加味すると、本件地域には住宅地域としての清浄または静穏を保持する積極的な必要性は乏しいといわねばならないから、住宅専用地区や風致地区につき妥当するような都市の発展の現実と一致しない政策的配慮を加えることは、妥当でないだけでなく、施行条例一一条の解釈適用をも誤まるものである。

(2)  施行条例一一条は、不許可の基準として、善良の風俗保持上著しい支障があることをあげている。これは、営業の自由を原則として保障する立前から、明らかに営業の自由を制限するに足るほどの公共の福祉の要請がある場合に認定されるとの趣旨によるものである。

ところで、申立人が調査したところによれば、大阪府下の住宅地域であつてぱちんこ遊技場の設置許可がなされている例が九例に及んでおり、また学校、病院等に隣接している場合にも、病院等から開設の承諾書をとつた上で許可処分がなされているようであり、事実申立人の調査によつても、学校や病院から至近距離内にある営業が許可されている例が七例存在する。このような事例を考慮すると、被申立人による本件不許可処分は、施行条例の解釈適用において従来の具体的事例に反しており、恣意的であることが明らかであり、また申立人の営業権を不当に侵害するものであることを示している。ぱちんこ展営業が人間の射倖心を刺激する要素を有していることは当然であるとしても、射倖心自体は、それが生活全体を支配してしまうような極端な場合を除き、人間生活に実害を与えるものではないから、人間が大なり小なり有している射倖心を発散させる娯楽の場は社会生活上むしろ不可欠なものである。それ故ぱちんこ屋営業が本来的に善良の風俗に支障を与えるものであるということはできない。その上、本件建物には騒音防止措置が講じられており、付近住民より騒音に対する苦情がでるような虞れは些かもないし、本件遊技場設置場所の付近は近い将来市場または商店街となることが予想される場所であつて、本件設置によつて市民の生活の静穏が害されるような可能性は全然ない。

被申立人は、近隣の学童、青少年および住民に悪影響を与えることが必定であると主張するが、これは、京阪電鉄交野私市線沿線の爆発的な都市化と本件設置場所付近の商業地域化の実態をみないものであり、ぱちんこ遊技に対する根拠のない偏見から申立人の営業の権利を不当に侵害するものである。このような被申立人の見解は明らかに施行条例一一条にいう「善良の風俗」および「著しい支障」の要件の解釈適用を誤つたものである。

(二)  申立人の蒙る損害と損害回復を求める緊急性

申立人は本件遊技場建設のために土地購入費金四、七八五、〇〇〇円を含めて合計金一一、六六九、二〇〇円を現実に支出した。このうち金一、九八四、二〇〇円は、ネオン代、ぱちんこ機械代、ぱちんこ付属器具代、室内電気工事代、および冷暖房設備代として支出したもので、本件ぱちんこ遊技場の建設に投資した費用であり、これらは本件不許可処分によつて全額申立人の損害となるものである。また建物建築費金四、七五〇、〇〇〇円はぱちんこ遊技場にするためにその構造のものとして建築した費用であり、仮にこれをぱちんこ遊技場として使用することが不可能ということになれば、他の目的の建物に改造しなければならないわけで、当然多額の不要の支出を余儀なくされることになる。

申立人は以上の支出に充てるため、住友銀行より支出金の一部である金二、六〇〇、〇〇〇円を借用したが、その元利金返済として毎月約金一〇〇、〇〇〇円宛の支払いに迫まられている。

申立人としては、本件ぱちんこ遊技場経営による収入によつてこれを返済する予定であつたにもかかわらず、本件不許可処分のためにこれが不可能となつてしまつた。その上申立人の世帯は一家九人であり、現住所において夫が清酒の小売店を経営しているとはいえ、その収入利益は月額五・六〇、〇〇〇円程度にすぎず、本件不許可処分の効力が停止されない限り、申立人の一家はその生計の方途を失うことになり、完全な破産に立ち至ることになる。このように本件不許可処分は、善良な市民である申立人の一家の破滅に導くという重大な結果をもたらすものであるから、回復の困難な損害を避けるための緊急の必要性が存するというべきである。

四、申立人は被申立人を被告として本件不許可処分の取消しを求める訴えを提起しているが、本案判決が確定するまでの間に右処分の効力より生ずる回復困難な損害を避けるため緊急の必要があるので、本件申立てに及んだ。

第三被申立人の意見

一、本件執行停止の申立ては申立て自体不適法なものであるから、却下すべきである。

風俗営業等取締法一条七号、二条一項は、ぱちんこ屋営業を営もうとする者は、当該都道府県公安委員会の許可を受けなければならないと定めており、許可を受けないで右営業を営むことは禁止されている。ところで、申立人は本件申立てにおいて、本件不許可処分の効力の停止を求めているのであるが、仮に本件不許可処分の効力が停止されたとしても、それは本件不許可処分がなかつたと同じ状態を作り出すにとどまり、申立人の営業許可申請に対し許可が与えられたのと同様の状態を現出させるものではない。それ故、本件申立てによつては、仮にそれが認容されたとしても、申立人はぱちんこ屋営業を営むことはできないから、ぱちんこ屋営業を営めないことによる回復困難な損害を避けることもできない。

したがつて、本件申立ては、何ら利益のない執行停止を求めるものであるから、不適法な申立てとして却下すべきである。

二、本件処分に至る経過

本件ぱちんこ遊技場建設の事実を所轄の大阪府枚方警察署が知つたのは昭和四三年九月三日のことであるが、その後地元民の反対陳情があり、同署保安係長が現場を調査したところ、現地は住宅地域で善良の風俗を保持する上で著しい支障が生ずる虞れがあると認められたので、建築責任者である申立人の夫金武夫に対しその旨警告した。また大阪府警察本部保安第一課では同年一〇月一二日に、更に枚方警察署においては同月一四日に、申立人や金武夫に対し、場所に関する許可基準に牴触する虞れがあるので、他に転業するよう行政指導をした。ところが申立人は同年一一月一八日本件許可申請書を枚方警察署に提出したので、被申立人は慎重に審議をした上、昭和四四年四月一〇日、本件営業所の位置が住宅地域内であり、かつ善良の風俗保持上著しく支障があると認められ、施行条例一一条の規定に牴触するという理由で、本件申請を不許可にする旨決定し、不許可指令書を同月一五日申立人に対し交付した。その後申立人より異議申立てがなされたが、被申立人は同年七月九日付をもつて右異議申立てを棄却する旨の決定をした。

三、本件遊技場設置場所は、住宅地域内にあり、善良の風俗保持上著しい支障があると認められるから、本件不許可処分には何ら違法性がないことになり、結局本件申立ては本案について理由がないとみえるときに該当する。

(一)  施行条例一一条にいう住宅地域は都市計画法に基づく住居地域の概念と必ずしも同一のものではなく、社会通念上一般的に住宅地域と認められるような環境を形成し住宅地域としての清浄または静穏を保持する積極的な必要性が客観的に認められる地域をいうものと解すべきであるが、本件遊技場設置場所は、都市計画法により住宅地域に指定されているところであるばかりでなく、客観的にも住宅地域としての清浄または静穏を保持する必要性のある場所である。したがつて、本件遊技場設置場所は、施行条例一一条にいう住宅地域に該当する。

(二)  また本件遊技場設置場所は、善良の風俗保持上著しい支障の存する場所である。即ち、本件遊技場設置場所の付近は、田園都市の名にふさわしい閑静な住宅地であり、右設置場所の南側町道を通つて通学する児童数も相当多いところから、仮にぱちんこ遊技場が出現すれば、正に清浄な住宅環境を著しく害することになり、近隣の学童、青少年および住民に悪影響を与えることは必定である。殊に交野町の計画によれば、本件遊技場設置場所の東側道路をはさんだ向い側の農地に児童遊園地の設置が予定されており、このような将来をも展望すれば、この近辺が今後静穏を保持する必要のない地域になるなどとは認められないから、被申立人の本件不許可処分には施行条例一一条にいう「善良の風俗保持上の著しい支障」との要件を適用する上で何らの誤りも存しない。

なお、申立人は大阪府下において住宅地域でありながらぱちんこ遊技場が許可されている例、および、学校、病院から至近距離にありながら同遊技場が許可されている例をあげ、本件不許可処分は恣意的である旨主張するが、右事例はいずれも本件と類似する場所的環境にあるものではなく、比較の対象にはなり得ないものであり、被申立人が本件についてことさら恣意的に不許可処分をしたようなことは決してない。

四、本件申立てには回復の困難な損害を避けるための緊急の必要性がない。

申立人は、昭和四三年夏、当初は中華料理店をするため店舗の建築に着手し、その旨の建築物確認申請をしながら、途中で事前にぱちんこ店としての建築物確認を受けないで、ぱちんこ店用の建物に変更したのである。そして右店舗の建築中に、枚方警察署署員および大阪府警察本部保安課の担当官が、ぱちんこ営業について不許可処分となる虞れがある旨を申立人に伝えていた。してみれば、申立人は本件ぱちんこ営業が不許可になる可能性が非常に強いことを承知の上で、ぱちんこ店としての資本を投下したのであり、不許可処分がなされることによつて生ずる損害は十分予想していたものというべきであるから、それが現実化したからといつて、これをも回復困難な損害を避けるための緊急の必要があるということはできない。

また申立人が主張する損害の内容について検討してみても、土地購入費や建物建築費については他の営業をなすことによつて投下資本の回収を図ることが容易であり、ぱちんこ営業のための諸設備に支出した費用についても、契約の解除や転売をすることによつて損失の回復を図ることが可能である。

更に申立人は、本件不許可処分により申立人一家の破滅という結果が生ずると主張するが、申立人夫婦は現住所において清酒小売店を経営しており、相当の収入利益をあげているから、一家の生計を維持するためには最少必要限度の収入が得られているものと推測される。

以上いずれの点からみても、本件不許可処分の効力を停止しなければならない程、回復困難な損害を避けるための緊急の必要性があるとは認められない。

第四当裁判所の判断

疎明資料によれば、申立人は、昭和四三年八月頃、夫金武夫の所有に係る大阪府北河内郡交野町大字私部一四二六番地の三一、宅地286.51平方メートルにおいてぱちんこ遊技場を開設するため、申立人名義で建築面積152.109平方メートル、延面積199.275平方メートルの木造トタン葺二階建店舗の建築に着手し、同年一一月中旬頃右建築工事を完成したので、同月一八日被申立人に対し、右店舗において、ぱちんこ遊技場「交野会館」を営業するについて、風俗営業取締法二条一項、および施行条例に基づき、営業許可の申請をしたところ、昭和四四年四月一〇日被申立人により右申請を却下する旨の処分を受けたので、更に同年五月二二日右不許可処分に対し、行政不服審査法六条に基づき被申立人に対して異議申立てをしたが、同年七月九日付をもつてこれを棄却する旨の決定がなされたことが認められ、また本件記録によれば、申立人は、被申立人を被告として本件不許可処分の取消しを求める訴えを提起し(当裁判所昭和四四年(行ウ)第八二号風俗営業不許可処分取消請求事件)、右本案判決の確定に至るまで、本件不許可処分の効力の停止を求めるため本件申立てに及んだことが明らかである。

そもそも、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為については、民事訴訟法における仮処分が排除され(行政事件訴訟法四四条)、また、行政庁の処分に対し取消しの訴えを提起しても、右処分の効力、処分の執行、または手続の続行は妨げられない(同法二五条一項)とされているのであるが、このような原則を貫徹するとすれば、仮に行政庁の処分に対し不服を有する者が、当該行政庁を被告として右処分の取消しを求める提起して、これに勝訴しても、その実効を期しえない虞れがあるので、このような事態を防止するため、本案判決の確定に至るまでの間、当事者間の法的状態につき暫定的な安定を図り、不服申立人の権利保全および損害防止に役立てようとする目的で設けられているのが、行政処分執行停止の制度である。それ故行政庁の処分に対し執行停止が許されるのは、仮に執行停止が認容された場合に、その直接の効果として、暫定的にせよ申立人の権利保全が図られ、これによつて損害の発生拡大が防止されうる場合に限定されるといわねばならない。

ところで、国民は公共の福祉に反しない限り、職業選択の自由を有しており(憲法二二条一項)、したがつてまた選択した職業を遂行する自由、つまり営業の自由も有しているのであるが、ある種の営業については、国家はその一般的統治権に基づき、一定の警察目的のために、その営業を一般的に禁止し、警察上の許可処分がなされた者に対してのみ個別的にその禁止を解除し、右許可処分を受けた者のみが許可を受けた営業をなしうるものとしている場合がある。風俗営業等取締法二条一項によれば、同法に定められている風俗営業を営もうとする者は当該都道府県公安委員会の許可を受けなければならないとされており、右規定に違反した場合には、同法七条によつて刑罰が科せられるとされているのである。そうすると、風俗営業を営もうとする者は、当該都道府県公安委員会の許可処分を受けない限り、風俗営業等取締法との関係では適法な風俗営業をなし得ないものといわねばならない。この点に関して、申立人は、営業の自由が憲法上保障されていることを理由に、風俗営業の場合の許可は実質的には届出制と解すべきであり、不許可処分がなされない限り営業の自由を有している旨主張するのであるが、風俗営業等取締法が風俗営業を営もうとする者に対して、いわゆる警察許可を受けなければならないと規定しているのは、善良の風俗を保持するという警察上の目的からみて合理的な理由があるというべきであり、この目的を達成するために、風俗営業等取締法三条の規定をうけた施行条例が風俗営業をなすための人的物的許可基準について詳細な規定を設けているのであつて、法は、この人的物的許可基準を具備している者に対して営業許可が与えられることによりはじめて当該風俗営業をなしうることになるというように規定することによつて、叙上の目的の達成を十分に保障しようとしているのである。したがつて、申立人の右主張は、風俗営業等取締法の規定の趣旨を誤解したことによるのであつて、当裁判所の採用しないところである。そして、ぱちんこ屋営業も風俗営業等取締法一条七号によつて風俗営業の一つに該当するものとされている。

それ故、申立人の本件申立てが仮に認容されるとしても、それは本件不許可処分がなされなかつたと同一の状態、つまり申立人の営業許可の申請がなされたにすぎない状態が現出されるにとどまり、これによつて被申立人が営業許可をなしたと同一の法的状態が醸成されるわけではない。しかるに申立人が本件申立てにおいて回復の困難な損害として主張するものは、すべて申立人のぱちんこ屋営業が現実になされうることによつてはじめてその発生ないし拡大が防止されるものであることは明らかであるから、本件申立てによつては、その直接の効果として、申立人の損害の発生ないし拡大を防止することは不可能であるという外はない。

してみると、申立人の本件申立ては、その申立ての利益を欠くことになるから不適法であるといわねばならない。

よつて、申立人の本件申立てを却下することとし、申立費用の負担について民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり決定する。(日野達蔵 喜多村治雄 南三郎)

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